緊急時に使える簡易トイレを用意しないと最悪の場合、死んでしまうワケ

防災用ダンボール

災害が起きたってトイレはなんとかなるもの。トイレは避難所へいけば大丈夫。最悪の場合は外でしちゃえばいい。そんなふうに楽観的に考えていると、いざ災害が起こった時に大変な目に遭うかもしれません……。

実際、災害に遭われた方がもっとも「欲しい」と思ったものはトイレだったという話もあります。

避難所のトイレは長蛇の列。それだけならまだしも、水がない状態で大勢の人がひっきりなしに使うトイレですから、ものすごく汚いのです。足元は尿でべちゃべちゃ。臭いもひどく、最悪の場合はトイレが壊れてしまい、糞尿で水浸しのような状況になります。それでも水がない以上、掃除することもできませんし、手を洗ったり足を洗うことはできません。夜は暗く、段差もあるのでお年寄りや子供たちはトイレをするのも大変です。

しかし、トイレを我慢していないと最悪の場合、死に至ってしまうことも……。今回は災害時にトイレを我慢するとどうなるのか、簡易トイレを持つべき理由をまとめてみたいと思います。

【目次】
トイレと死亡の関係
過去の災害状況
簡易トイレの使い方&災害時に凝固剤はいくら欲しい?
緊急用簡易トイレを用意するなら

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〇トイレと死亡の関係

東日本大震災や阪神・淡路大震災において、『避難所で健康を害して死亡する』という事件が起こりました。この死亡原因のひとつがトイレを我慢したことでした。

阪神・淡路差異震災では約900人の方が震災関連死とされていますが、その3割は心筋梗塞や脳梗塞で亡くなっています。

心筋梗塞や脳梗塞の原因はストレスもありますが、その原因は『トイレをむりやり我慢する』ことでも起こります。

冒頭でも述べたように、避難所のトイレはものすごい臭いで劣悪な環境です。水も使えないので、排せつ物でいっぱいのトイレに我慢して排泄したあと、よごれた場所を洗いたくても洗えない……。避難所自体もひどい臭いが充満します。このような状況が続くと、「トイレに行きたくないから、水もごはんも食べたくない……」と人々は食べ物を食べるのを我慢しはじめます。

その結果、脱水症状が起こったり、体力の低下で健康状態が悪化。そしてエコノミークラス症候群となり死に至るのです。

避難生活において、『安心して使えるトイレ』があるかないかというのは、生死をも分けるほどに重大です。

 

~エコノミー症候群とは~

 

エコノミー症候群とは、航空機の席ランクのなかでエコノミークラス(スペースが狭く自由が利かない)の利用者によく起こることからそう呼ばれるようになりました。

長時間同じ姿勢でいることで血流が悪くなり、血栓など健康に悪影響が出てくるというものです。東日本大震災でも、震災で家を失ったことで、長期の車中泊を強いられた方々にこの症状が多く見られたそうです。また、震災後の生活でトイレを控えようと水を飲むことを我慢していると、血液が凝縮して血栓ができやすくなります。震災後の生活というのは窮屈で同じような姿勢をとり続けてしまうもの。水分をしっかりとり、4~5時間おきに運動することを心がけなければ、血栓ができやすくなってしまいます。

震災後のストレスにより、不眠状態になってしまい、睡眠薬を使用する人もいますが、睡眠薬を使うと、静脈血流が圧迫され、血栓ができやすくなることも分かっているので、注意が必要です。

 

・エコノミー症候群を防止するためには

 

エコノミー症候群を防止するためには、トイレに行くのを我慢せず、しっかりと水分をとること。そして、弾性ストッキングを使用することで、足の血流をよくすることが効果的です。

そのためには、簡易トイレを用意し、公的な仮設トイレに行かなくても安心して用が足せる状況にするのが望ましいです。

 

以下、『病院検索ホスピタ』より引用します。

https://www.hospita.jp/disease/1087/

 

【エコノミークラス症候群の症状】

エコノミークラス症候群は、長時間同じ姿勢を続けることで膝裏の血行が悪くなることで、軽症の場合は足のむくみや痛みが、重症の場合は、呼吸困難や胸の痛みとして症状があらわれます。このほかにも動悸や冷や汗、チアノーゼ、血圧低下、意識消失など命にかかわる身体異常として発症することもあります。また、静脈と皮膚の間に炎症を起こすことで、血栓性静脈炎を引き起こすことがあります。

 

【エコノミークラス症候群の原因】

エコノミークラス症候群になる原因とは何か。その発症のもととなるのは、例えば、いすやベッドで体制をずっと変えなかった場合に生じる、血液凝固です。また、腹部や下半身の静脈を圧迫する腫瘍などによって静脈内の血流がとどまってしまうということも理由の一つとなっています。通常は、下半身の筋肉を動かすことによりこれを回避することができます。

 

【エコノミークラス症候群の検査と診断】

私たちが飛行機に乗るとき、長い間座席に座っていると血液が凝固するなどしてエコノミークラス症候群にかかる可能性がありますが、その検査方法についてです。方法としては、胸部X線や心電図を用いて、それに加えて動脈内の血液にどれだけの濃度で酸素や炭酸ガスが入っているのかを調べたり、心エコー図を用いて、更に造影CTを行うというものがあります。

 

【エコノミークラス症候群の治療方法】

エコノミークラス症候群の治療法としては、肺動脈に詰まった血栓を取り除いて肺の血液の流れを回復させることを目的とします。そのために、症状が比較的軽い場合は、血栓がこれ以上出来ないように薬を服用し、経過をみていく抗凝固療法が行われます。血栓が広範囲に及んでいる場合は、詰まった血栓を溶かす作用をもった薬を投与する血栓溶解療法を行います。

〇過去の災害状況

兵庫県が作成した『避難所等におけるトイレ対策委検討会』の資料では、過去の災害時の状況が以下のようにまとめられていました。

 

                         災 害 名 問 題 点 等
1 阪神・淡路大震災

(平成7年1月17日発生)

・道路網の分断や極度の交通渋滞により、他都市

等から提供された災害用トイレの設置に手間取

った。

 

・神戸市内の水洗化率が高かった(水洗化率

97%)ため、バキューム車の保有台数が20台程度

でし尿の汲み取り体制が不十分であった。

 

・ 直後の行政の災害対応においては、水、食糧、

毛布、医薬品の確保が優先された。トイレの対応

は後回しとなり、避難所に災害用トイレが設置さ

れたのは早いところでも3日目以降となり、中に

は11日目に設置されたという事例もあった。

2 新潟中越地震

(平成16年10月23日発生)

・災害用トイレは100人に1基の割合では、数が

足りないという苦情が多くあった。

・“トイレが不安で水を飲むことを控えたとする人”は小千谷市で33.3%、川口町で13.8%にのぼった。

・死者60人のうち半数近くが関連死といわれて

いる。ストレスや不眠、集団生活による感染症なども原因と考えられる。トイレを我慢したことも一因となっている

3新潟中越沖地震

(平成19年7月16日発生)

・新潟中越地震で被害を受けて修繕した下水道

(管渠やマンホール)は損壊がなく、逆にその時

に被害を受けていない下水道の損壊が多かった。

 

・発災直後に役場職員が駆けつけ、水洗トイレ利

用を禁止し、備蓄してあった簡易トイレ・携帯ト

イレ(便袋式トイレ)、そして消毒液とウェット

ティッシュの利用を指示した。このような素早い

対応は効果的であった。

 

東日本大震災

(平成23年3月11日発生)

・発災当初は寒さが厳しく、屋外に設置された災

害用トイレの使用は困難であった。

 

・トイレの数もバキュームカーも不足していた

ため、使用不可のトイレが多数あった。

 

・組立トイレとセットで使うテントは、備蓄や持

ち運びが容易であるが、屋外に設置した場合、強

風により転倒した例が多数あった。

 

この報告から、トイレを我慢するのをやめようと思っても、それ以前に『トイレができない』という状況に陥ってしまうことが分かります。災害が起きたからといって、すぐに災害用トイレが使える状況にはならないのです。新潟中越沖地震では、『発災直後に役場職員が駆けつけ、水洗トイレ利用を禁止し、備蓄してあった簡易トイレ・携帯トイレ(便袋式トイレ)、そして消毒液とウェットティッシュの利用を指示した。このような素早い対応は効果的であった』とあります。

役場が備蓄している簡易トイレをもらえたらラッキーですが、災害が起こった時には「私も!」「私も!」と多くの人が簡易トイレを求めて手をあげるでしょう。そのときのことを考えると、簡易トイレを個人用に購入し、家族分のトイレの凝固剤とポリ袋を用意しておくことが大事です。

〇簡易トイレの使い方&災害時に凝固剤はいくら欲しい?

簡易トイレとは『小さな便器がついたトイレ』のこと。袋状になっている携帯トイレとはちょっと違います。最大の特徴は、おしっこ用の携帯トイレと違い、簡易トイレは大便も可能なこと。

簡易トイレの便器にポリ袋をセットし、用を足したら、消臭凝固剤をポリ袋の中に入れます。すると、凝固剤が便を固めてくれるので、そのままポリ袋の口を結び、可燃ごみに出します(凝固剤で固めた便はトイレに流すことはできません)。

健康な人間なら、1日5~6回はトイレに行きます。家族3人で3日間の避難生活を送ることを考えると、約54個の凝固剤が必要となります。しかし、これはあくまでも最低日数の避難生活の場合。実際に凝固剤を用意するときには、100個くらい用意するのが望ましいでしょう。

〇緊急用簡易トイレを用意するなら

緊急用の簡易トイレを用意する場合は、災害用のものを選びましょう。以下の点に注意すると良いと思います。

 

・持ち運びが簡単かどうか

・防菌・防臭効果があるか

・丈夫かどうか(使っている間に壊れないか)

・災害状況が終息したときに簡単に処分できるか

 

丈夫に出来ているかどうかは当然の条件ですが、やはりトイレは汚れたものを入れるところなので、災害が落ち着いたら捨てるのが衛生的です。次に来る災害時のために洗って再保存するのは負担がかかります。

やはり、おすすめは使い捨てができるよう、『災害の時だけ利用出来るダンボール簡易トイレ』にしましょう。

ダンボールで作られたものは「すぐ壊れてしまう」「小さい」と思う人もいるかもしれませんが、大人が1週間ダンボール簡易トイレを使用しても何も問題がありません。緊急時の対策として、一つは持ち運びしやすい簡易トイレを買っておくと便利です。

 

緊急用トイレの中でおすすめなものは、『たすけくん』いう商品の簡易トイレです。

『たすけくん』は浜松市、磐田市の各自治体と県立学校の緊急用品として買われている簡易トイレで、組み立て式の段ボールです。

組み立てる前の大きさは、高さが310mm、幅が280mm、奥行きが400mの長い四角形になっており、持ち運びしやすいように取っ手がついています。ダンボールの重さも女性が片手で持ち運べるほど軽いです。

ダンボールは大きすぎないので、車に常に積んでおくのもおすすめです。

組み立てると、200kgの重みに耐えるほど丈夫なため、楽に持ち運びできますし、家族で繰り返し使用出来ます。

6回分使用出来るダンボール簡易トイレと処理用袋と消臭凝固剤もついて、お値段は2,160円。

災害時には、避難所など、人が多いところでダンボール簡易トイレを使用することもありますが、その際に重宝する目隠し用のコートも販売されています。コートをかぶると外からは簡易トイレが見えず、安心して用を足すことが出来ます(目隠し用のコートの値段は2,000円で販売されています)。

 

ちなみに、『たすけくん』は消耗品だけのキットの販売されています。

(処理用ポリ袋が10袋と消臭凝固剤が10袋とポケットティッシュが10個合わせて1,000円)

トイレの凝固剤は一言で「凝固剤」といっても、値段と成分はさまざまです。

一部の消耗品は便を固めるだけのものですが、災害用の凝固剤の中には、臭いを防ぐものや除菌が出来るものもあります。

数時間だけ出かけるときに使用するだけなら、どの凝固剤を使っても問題ありませんが、緊急時や災害時にはちょっとの病気も命に関わるので、最低でも除菌効果がついているものを選びましょう。

凝固剤が防菌・防臭効果のあるものなら、腸菌と黄色ブドウ球菌に感染する確率をかなり低くすることが出来ます。下痢や腹痛は一見あまり問題ない症状に見えますが、体力が弱まっているときの災害時には回復しづらくなるもの。症状が進行してしまうと、腎不全や脳浮腫からくる意識障害、あるいはけいれんを起こすころもあるため注意することが肝心です。

『たすけくん』を購入するときに一緒についている凝固剤なら、消臭と除菌効果があるので、心配ありません。

値段の安いポリ袋ですと、下手をすればポリ袋が破れてしまうこともありますが、たすけくんについているポリ袋なら丈夫です。3点セットの消耗品は1,000円で購入出来るので、困ったときのために購入しておくと便利です。